【特集・戦争と大學 第3回】改正国立大学法人法が成立 大規模な国立大に合議体
大規模な国立大に対し、中期目標や予算など運営方針を決める新たな合議体の設置を義務付ける国立大学法人法の改正案が、先月13日に参議院本会議で可決、成立し、今年10月に施行されることが決まった。
理事が7人以上で、収支額や収容定員および教職員数が大規模な国立大を「特定国立大学法人」に指定し、「運営方針会議」の設置を義務付ける。対象校は東北大、東京大、京都大、大阪大、名古屋大と岐阜大を運営する東海国立大学機構の5法人とされるが、他の国立大も希望すれば設置できる。同会議は学長のほか3人以上の委員で構成する。委員は文科相の承認を得て学長が任命する。
改正法の審議においては、かねてより大学関係者が大学の自治の存続を懸念する事態が報道されていた。筑波大の永田恭介学長を会長とする国立大学協会は昨年11月24日付で声明を発表している。声明では、運営方針会議の設置の有無などによって国立大への資金配分に差を設けないこと、および同会議の運用にあたり対象校の自主性と自律性を尊重することの2点を求めた。大学側の懸念に配慮する形で付帯決議が定められ、文科省は「法案の対象となる国立大学法人などへ丁寧に説明」するとしている。
本改正案では、国立大などの資金調達における規制緩和のほか、10月1日に東京医科歯科大と東京工業大を東京科学大に統合することが合わせて組み込まれた。
日本学術会議 法人化の方針
政府による学術に関する改革は、日本学術会議にも及ぶ。学術会議の組織体系を見直し、国から独立した法人格を有する組織とする方針が昨年、打ち立てられた。科学的な観点から政府に助言する役割に変化はないが、一層の独立性や自律性を担保する狙いがある。
一方、学術会議は先月9日の声明で、「役割発揮には前提として政府と学術会議との間の信頼関係の再構築が重要」として、組織改革を行う際の要件を求めた。要件は、政府からの独立性の確保、会員・会長選考の自律性・独立性の維持、政府への勧告機能を含む学術会議の機能強化、国の責任に基づく安定的な財政基盤、国民の理解を得られる行政コストによる必要不可欠の効率的な改革、といった5点を挙げた。
昨年10月には学術会議が推薦した新会員候補105人全員が岸田首相により任命された。2020年に当時の菅首相が任命を拒否した6人は105人の推薦に含まれていないが、新会長の光石衛・東京大名誉教授は引き続き撤回を求める姿勢を示した。
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